第24回「住まいのリフォームコンクール」
住まいのリフォームの優れた事例を表彰してリフォームを推進することを目的とした、(公財)鹿児島県住宅・建築総合センターの主催する「住まいのリフォームコンクール」は今年で24回目となりました。
来年でいよいよ25年、四半世紀の記念すべきコンクールとなる予定です。
平成元年、平成二年(1990年)頃の日本はまだバブル経済の中にあり、古くなり使いにくくなったら建て替えるという時代でした。それが人口減少、高齢化、地球環境問題が浮上した今日、建築物を大切に使い続けていく時代に変わりつつあります。
リフォームのデザインは、設計や工事を進めると、新築より難しい問題も多いですが、その技術も徐々に蓄積されつつあります。そして、年老いた建築物をまちなみに残していくことは、街の歴史と文化の厚みを増しつつ、まちなみを美しい景観とすることが可能です。是非、人も建築物も若い世代、年老いた世代の双方が混在する多様性のある街になってほしいものです。
さて、今回はリフォーム工事の設計者、施工者から22件の応募がありました。
審査委員会が10月7日に開催され、最初に各審査委員が数作品選び、意見交換を重ねながら、知事賞をしぼりこみました。その後も意見が分かれた場合には投票を行い、理事長賞、企画賞、奨励賞、特別賞を厳正に選考致しました。
鹿児島県知事賞
鹿児島市内に建てられた昭和29年の在来工法の住宅を、長期優良住宅化リフォーム推進事業により、全面的にリフォームした作品です。
構造の耐震性能だけでなく環境性能も新築住宅並みに引き上げたリフォームで、外観デザインは、新築と変わらない印象を受けます。特に環境負荷軽減の効果がある窓上部の庇が、外観デザインのアクセントとなっていて目を引きます。
二階外装の青い壁面材が周辺の街並みに調和しているかは写真から判断出来ませんでしたが、何よりも、建築リフォームの全体の質の高さが評価され、鹿児島県知事賞に審査員全員の賛同できまりました。
大切に思いを継ぐ 長期エコ・リフォーム | (株)建築工房 匠 |
(財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長賞
伊佐市の築80年の昭和初期の民家の台所部分をリフォームした作品です。
鹿児島の民家には、「おもて」と「なかえ」に分棟になっていたものがあり、この民家も母屋と台所に分かれて使われていました。
この作品は、その土間のあった台所全体をリビング、居間、台所に大改修し、古材を生かしながら現在のデザインにリフォームしたものです。また内部のデザインだけでなく外観の昼景、夜景もすばらしく、リフォーム後のデザインが評価されました。応募書類からは読み取れなかったので、耐震及び環境性能の向上についてのさらなる取組が望まれます。
目丸の灯 | 現代建築研究所合同会社 |
企画賞
大島郡龍郷町の築35年の民家の改修です。
キッチンやリビング、ユーティリティの位置を逆にし、日常空間を一体にして使いやすくするとともに、それらの居室に海風が通るよう配慮されています。また、断熱材の施工や段差解消をはじめバリアフリーも考慮しながらリフォームし、現代の新築住宅に劣らない仕様を目指した作品です。
使い勝手と機能を更新されているので、総合的にすぐれていることが評価されました。
昔ながらの古民家を再生させた家 | (株)丸三建設工業 |
企画賞
鹿児島市内の築20年のマンションを改修した作品です。
工事費をおさえながら新築マンションと同じような開放的なキッチンとするとともに、柱により使いにくかった凸状スペースを、棚を設けた書斎コーナーにして有効に活用するといったリフォームが実施されています。
新築マンションを購入するより中古マンションを購入し改修により新築と同等の居住性を確保するというのは、若い世代の都市居住の選択肢の一つとして、一層注目されることを期待します。
広々新居 ー中古マンション購入リフォームー | (有)西谷工業 |
企画賞
鹿児島市の25年前に建てられた在来木造の住宅のキッチンを低予算、短工期(15日間)でリフォームした作品です。
窓に向いていたシンクやコンロを反対側の洋間側に向けた対面キッチンに改修し、その際障害となった柱を抜いた為、一部補強が実施されています。ある意味、「部分リフォーム」ですが、日常生活は格段に使いやすくなったと判断されます。部分改修の好例として評価されました。
あこがれの対面キッチン | 日本ガス住設(株) |
奨励賞
鹿児島市の古民家のリフォームです。
リフォーム前は随分建物が痛んでいたようですが、インテリアの古材の架構材や建具を生かしながら改修し、民家の雰囲気が写真からも読みとれる作品です。
猫が縁側で居眠りする情景を彷彿させます。一方、外装の改修には伝統的な材料があまり使われていないようで、「民家で過ごす」といった場合の、外装のオーセンティシティの継承の方法が今後の民家改修の課題の一つのような気がします。
民家で過ごす 猫との住まい | (株)鹿児島タニザキ |
奨励賞
鹿児島市の築25年のマンションの改修です。
最上階の利点を生かして、広々したバルコニーに面してLDKを配置し、これまでのLDKから各個室にアクセスした昭和の住宅団地のような平面を一新した作品です。
インテリアは、収納棚等を設けてストイックにまとめられ、好感が持てるデザインが展開されています。
設計者が各部屋の位置や向きを生かしたリフォーム案を提案していることが評価されました。
暮らし、再生!希望を形に! | (株)アリマコーポレーション |
特別賞
鹿児島市の築38年の住宅の改修です。
新耐震前の基準で建てられた在来木造の住宅で、基礎から耐震補強をしっかり実施した作品です。
ピアノのあるLDKを大きく確保するため、壁を一部撤去し、筋交いをインテリアとして利用しながら心地よい空間となっています。
耐震補強を積極的に実施しながら機能性、デザイン性を確保したリフォームとして評価されました。
高気密、高断熱のワンルーム空間で開放的な暮らしを楽しむ | (株)内門工務店 |
審査講評
住まいのリフォームコンクール審査委員会
委員長 鯵坂徹(鹿児島大学大学院理工学研究科 教授)