安心して生活を楽しむことができる住まいづくり 鹿児島住宅リフォーム推進協議会

事例紹介

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第29回「住まいのリフォームコンクール」審査講評

住まいのリフォームの優れた事例を表彰してリフォームを推進することを目的とした、(公財)鹿児島県住宅・建築総合センターの主催する「住まいのリフォームコンクール」は今年で29 回目となった。今年の応募作品は、木造住宅、鉄筋コンクリート造など14 件だが、例年に比べて見ごたえのある作品が多く、古民家の改修も目についた。

総務省が平成30 年に実施した住宅・土地統計調査によると、全国の空き家率は13.6%、鹿児島県の空き家は約15 万戸で18.9%、全国6 位で全国平均を上回り、九州内ではトップである。それらの空き家を活用するために、リフォームの果たす役割は非常に重要である。

私も学生と古民家を改修しているが、シロアリの被害が甚大で、水廻りは解体せざるを得なかったため、大量のモルタルや煉瓦のガラ、合板等が山積みとなった。解体新築よりも改修は廃棄物が少ないはずと安易に考えていたが、自分たちで解体し分別する労力も随分大変で、その処分費もさらに予想以上だった。無垢の木材は大工さんが再利用するか、一部は薪ストーブの燃料として使ってもらえたが、多くは処分場に運ばざるを得なかった。

日本では、リサイクルを、マテリアルリサイクル(材料として再資源化)、ケミカルリサイクル(原料として再資源化)、サーマルリサイクル(廃棄物を燃焼し熱回収)の3つに大別している。伝統構法の古民家の無垢の木材は、そのまま活用でき、家具等に転用も可能で、燃料ともなる。しかし在来工法の住宅の合板や集成材は、加工転用が難しく、接着剤が含まれているので安易にストーブ等では燃やすことができず、対応できる炉でサーマルリサイクルするしかリサイクルの方法がない。

また、現在大量に使われているプラスターボードは、回収され再生されマテリアルリサイクルしているが、新品一枚300 円前後のボードの処分には約1000 円のリサイクル費用を要する。合板やプラスターボードに比べ、木の無垢材は容易にマテリアルリサイクルが可能で、工業製品でない昔からの材料がいかに理にかなった材料であるかを痛感する。やはり日本の伝統構法が千年かけて確立したシステムは、リサイクルの側面から考えても、すばらしいポテンシャルを有している。改修や新築の材料を選択する際に、将来のリフォームや解体時のリサイクルまで、今後は十分配慮していくことが望まれよう。

さて、今年度の審査委員会は10 月1 日に開催され、最初に7 名の審査委員が14 件の応募作品を各自読み込んだ後、一人7 票を各作品に投票した。今回は満票の作品がなく、5 票が3 作品、4 票が6 作品と票が割れた。意見交換の後、3 票以下を選考からはずし4 票以上の9 作品に対して、各審査員が3 票を投票した。その結果、4 票が1 作品、3 票が3 作品、2 票が4 作品となった。その際、共同住宅の二住戸を一住戸に改築した作品について、合法だが管理組合の了解がえられているかが確認できず、投票に慎重にならざるを得なかったものがあった。

意見交換の結果、再々度、3 票以上の4 作品に対して各審査員2票を投票し、5 票の作品に知事賞、4 票の作品に理事長賞とすることを決定した。残った2 作品に関して、施主自らが施工に参画しローコストで古民家を改修した作品が企画賞にふさわしいとの意見で一致し、他の一作品を奨励賞とした。

再度審査員で全作品を見直し、当初4 票だった鉄筋コンクリート造の共同住宅のリフォーム作品も奨励賞とし、基礎を補強し壁を増やした古民家改修に特別賞(耐震補強)、車椅子で生活できるようにバリアフリー化した作品を部門賞とした。今年度は、応募数が昨年より減ったこともあり、知事賞、理事長賞の他に、企画賞1 作品、奨励賞2 作品、特別賞1 作品、部門賞1 作品の総計7 作品を受賞対象として最終決定した。なお、審査終了後、各応募者・設計者・施工者が事務局より審査員に開示され、また、今後のコンクールの募集内容等について意見が交わされた。

審査講評

住まいのリフォームコンクール審査委員会
委員長 鯵坂 徹 [鹿児島大学大学院理工学研究科 教授]

審査委員
委員長鯵坂 徹 鹿児島大学学術研究院理工学域工学系教授
委 員古川 稔 (一社)鹿児島県建築士事務所協会会長
委 員有元 綾 (公社)鹿児島県建築士会女性部会副部会長
委 員木場 正人 (一社)鹿児島県建築構造設計事務所協会会長
委 員岩元 ミユキ 鹿児島県インテリアコーディネーター協会会長
委 員高崎 智幸 鹿児島県土木部建築課住宅政策室長
委 員西薗 幸弘 (公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長
第29回「住まいのリフォームコンクール」入選作品集

鹿児島県知事賞:『思い出はそのままに 安心して過ごせる家へ』

築48 年の木造二階建ての住宅の西側にあった二間続きの和室及び水廻り部分を減築し月極駐車場と庭を整備し、新たに旧和室の部材を一部再利用して8 畳の和室と水廻りを既存北側に増築した計画。

耐震性能をIw 値0.3 から1.39 に、そして断熱性能も向上させ、明るく住みやすい住居にリフォームされている。

使いにくいゾーンを思い切って改築して、収益を得られる駐車場に変えた設計手腕だけでなく、長期優良住宅、BELS 認定の認定申請や鹿児島市の耐震診断・耐震改修補助制度を使い、鹿児島市と国土交通省長期優良住宅化リフォーム事業の補助金を活用した点も高く評価でき、鹿児島県知事賞に選定した。

『思い出はそのままに 安心して過ごせる家へ』 有限会社ゆうあいプラン

(公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長賞:『隣どうしで暮らす日々~別棟二世帯リノベ~』

東西に木造平屋二棟が並んだ親世帯(築35 年)と子世帯(築48 年)の住宅をリフォームし、住み手を入れ替えた計画。

双方の住宅とも、これまで小部屋に区画されていた諸室を見直し、耐震要素に注意しながら大部屋化し、南面に快適なLDK を創出している。

応募資料を見ると一旦軸組みの状態にまで仕上げを解体し、耐震補強を実施している。この計画も知事賞案と同様、断熱材新設、外部建具取替により断熱性能を向上させ、また、耐震性能も向上させており、長期間活用できる住宅にリフォームされている点が確認できた。また、応募資料に参考資料として図面と工事写真が添付されており、審査員が内容を理解しやすく好感がもてる提案だった。

『隣どうしで暮らす日々~別棟二世帯リノベ~』 有限会社イヤダニ工務店

企画賞:『民家再生』

48 年前に移築してきた古民家を、施主自らも工事をしながらリフォームした計画で、ローコストで実現されている。

写真から判断すると、本体は江戸期か明治期の伝統構法による二ツ屋(なかえ・おもて)だったのではないかと思われる。旧なかえ部分と想像される西側の土間部分の多目的室の上部がロフトとして活用され、床の間にあたる部分に通り土間が設けられている。また、旧おもてと思われる東側部分の玄関にも土間が設けられ使いやすい拡がりのある一室空間となっている。

屋根が切妻屋根で入母屋でないので元は茅葺きだったのかとも考えられるが、これまでの経緯や、詳しい資料がなく、それらが添付されていれば、審査でより高い評価が得られた可能性があった。

『民家再生』 柗村 彰

奨励賞:『歴史を住み継ぐ「なかえ」のある癒しの家』

薩摩川内市の築約120 年以上前の二ツ屋形式を継承したと考えられる古民家のリフォーム。

昭和期に貼られたと思われる合板やビニールクロスを撤去し、本来の古民家の美しいインテリアに近づけている。外部建具の一部を複層ガラスに交換する等の機能の向上も行われ、古民家の活用事例として評価され、奨励賞となった。是非、さらに末永く住み続けてもらいたいものである。

『歴史を住み継ぐ「なかえ」のある癒しの家』 有限会社福山組

奨励賞:『機能性と遊び心を両立させた住まい』

築29 年の4LDK のRC 共同住宅の一室をリフォームした計画。

4LDK の小部屋の区画を撤去し、リビングを拡充し2LDK にリフォーム、また、桜島の降灰を考え窓際にドライルームが設けられている。

LDK 以外はストレージと寝室がワンルームのみというわりきった平面計画で、しかもその寝室の間仕切り壁にはLDK の間に窓が設けられている。実質的には若い世代が住みやすいほぼワンルームの提案で、今後、家族の成長とともに少しずつ変化が生じていくのかもしれない。

『機能性と遊び心を両立させた住まい』 ヤマサハウス株式会社

特別賞:『鎮守の杜の古民家』

築100 年の古民家をリフォームした作品。

施主自らが伝統構法の古民家の内部を軸組が見えるまで解体し、ジャッキアップし礎石補強を行った計画。和室四室の田の字型の古民家の平面を、縁側を取り込んだ広いLDK と水廻り、クローゼット、玄関・勝手口に変更し、耐震要素となる壁面を設けながら現代風の家事関連スペース・収納の充実した平面に改修されている。

耐震性能を向上させている大壁の構造補強壁が設けられており、この点が評価され、特別賞に決定した。大壁構造の洋室のため、今後のシロアリ対策等に注意が必要かもしれない。

『鎮守の杜の古民家』 株式会社建築工房Work・Space

バリアフリーリフォーム部門賞:『バリアフリー工事で笑顔の絶えない住まいへ』

家族が病のため車椅子での生活を余儀なくされ、介護を軽減して住み続けられるように築25 年の在来工法の木造住宅をリフォームした作品。

水廻りの段差や扉を改修しただけでなく、コの字型の囲まれていた庭をリビングと同じレベルの広縁に改修、スロープを取り付けることにより、車椅子で容易に出入りできるように改修した点が評価できる。今回応募の中で、最小の工事費でより快適に住み続けられる住宅にリフォームされており、部門賞となった。

『バリアフリー工事で笑顔の絶えない住まいへ』 有限会社西谷工業

過去の「住まいのリフォームコンクール」

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