安心して生活を楽しむことができる住まいづくり 鹿児島住宅リフォーム推進協議会

事例紹介

get_reader
  • PDFファイル pdf をご覧いただくためには「Acrobat Reader」(無料)が必要です。
    インストールされてない方、または、ご覧いただけない方は、左のバナーから最新版をダウンロードしてください。

第26回「住まいのリフォームコンクール」審査講評

住まいのリフォームの優れた事例を表彰してリフォームを推進することを目的とした、(公財)鹿児島県住宅・建築総合センターの主催する「住まいのリフォームコンクール」は今年で26回目となった。

コンクリート住宅の改装やコンクリート外装の化粧直しの作品、まちなか店舗の外装をリフォームした作品等もあり、まちなみに対して一つの提案となり得る作品が見られ、リフォームによるまちづくりへの貢献の可能性が示された。しかし全体的には、和室を洋室化する事例が多く、和室離れが進んだ印象を受け、審査会では、畳の部屋がもう少し継承されてもよいのではないかという意見も聞かれた。

  人口減少、高齢化、地球環境問題がますます地方では顕在化しつつある。建築を大切に使い続け、地域の住環境を良好に保つことができるリフォームの需要はこれからさらに増えていくと考えられる。長年そのまちに親しまれてきた建築をまちなみに残し使い続けていくことは,まちの歴史と文化の厚みを増しつつ、その住環境の向上と維持が可能である。リフォームの材料にも、畳をはじめ、地域で加工製作される材料や、地域で生産施工できる材料を使い、地域経済の活性化に配慮したリフォームが今後は望まれよう。

  さて、今回は計22件の応募があった。審査委員会は10月7日に開催され、最初に各審査委員が8作品選び、意見交換を重ねながら,知事賞、理事長賞各1点を絞り込んだ。知事賞の作品は満票だったが、各審査員の考える最優秀の作品についても意見交換しながら逐次投票を行い、企画賞、奨励賞、特別賞を選考した。これまですぐれた耐震補強の作品を表彰していた特別賞には、協議の結果、今年度はコンクリート外装の改修作品を表彰することとなった。なお、審査員の設計事務所の作品が一点奨励賞に選定されたが、その審査員は公用により欠席で投票には参加しておらず、最後まで厳正に審査を実施した。

第26回「住まいのリフォームコンクール」入選作品集

鹿児島県知事賞:『陽だまりに集う』

祖母がひとりでくらしていた35年前の鉄筋コンクリート住宅のリフォーム。

離島にUターンした孫夫婦が、ほとんど使われていなかった2階に、家の中心となるリビングを1階から移し、明るく集う空間に激変させた。

東西2スパン、南北1スパンの内部には鉄筋コンクリートの柱や壁がない構造だったため、スケルトン状態に戻して、内部空間を開放的な構成に一新している。吹抜にあった2階への直階段が、安全な折り返し階段に変更されており、設計者が日々生活する視点でリフォームしたことが読み取れる。躯体を活かして、機能とデザインを今の新築以上に更新した作品で、鉄筋コンクリ-ト住宅のポテンシャルを最大限引き出した作品として、審査員全員の賛同で鹿児島県知事賞に選定した。

『陽だまりに集う』 DORON 建築設計事務所
岩下真奈美

(財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長賞:猫の額はそれなりに広い

まちなかの築約50年の木造の店舗付住宅の改修。

内部の改修も、1階事務室、2階住戸ともワンルームの拡がりある空間で好感が持てるが、市街地に新たな息吹を感じさせる通り側の外装改修が素晴らしい。

シャッター街となってしまったまちなみへの貢献の方法として、地域のまちなみの状況により評価は異なるが、今後この作品に続く事例が増えることも予想されよう。外壁の凹凸を減らして整形な平面形状とした減築手法、小屋組内の木製トラス、またバルコニーをプライバシーの確保に活用する等、設計者の多様ですぐれた提案も評価され理事長賞に選ばれた。

猫の額はそれなりに広い 飯野建築設計事務所

企画賞:「余白」から「あそび」へ

活用されていなかった余白とも言える縁側空間や和室のスペースを、リビングと一体にして有効利用した作品。

一続きの明るいリビング空間が生み出されており、天井を高くして梁をあらわしとしたそのインテリアは、山小屋のような豊かなイメージとなっている。

和室を将来仕切って子供部屋とする計画や、集約したウォークインクローゼット等、設計者の将来を見据えた提案能力も評価された。

「余白」から「あそび」へ 廣瀬卓司

企画賞:Bloom 〜最愛の人と過ごす時間〜

既存マンションのリフォームの作品である。

将来は巣立っていってしまう子供との時間を大切にするため、LDKに洋室の子供部屋を一室隣接して配置した改修計画。

和室のつづき間や白いインテリアの洋室を、木質系の暖かみアあるインテリアに改装されており、落ち着きある家族の時間を過ごすことができる空間となっている。また、既存のものをできる限り利用し、廃材を減らしている点も評価された。

Bloom 〜最愛の人と過ごす時間〜 津曲工業(株)

企画賞:のびのびと子育てができる家

賃貸で使われていた部屋を合体し、共同住宅の2室を1室化し、空間をうまく工夫し活用している。

今回の審査対象の作品では珍しくリビングに連続した畳の小部屋を設け、これからの子育てに利用できるよう配慮されている。また、キッチンから和室の様子が一望できるようにした強化ガラスを用いた間仕切り、機能的な水廻りの計画等からも設計者の力量を窺い知れる作品である。

のびのびと子育てができる家 松田英之

奨励賞:『単身世帯を楽しむ家』

郊外の築30年の和風の平屋住宅のリフォーム。

八人での生活が月日と共に一人となり、縁側をとりはらい、和室を洋室に機能的に改修しながら、外観は昔の姿を継承し、周辺の住環境の継承に貢献している作品である。

玄関脇に多目的に利用できる8畳の和室が一室つくられている。LDK内の旧来の柱もインテリアとして活用し印象的である。

『単身世帯を楽しむ家』 Dai 建築DESIGN

奨励賞:季節の移ろいを感じる家

事務所として利用していた約500㎡の2階建ての鉄骨造建築の2階と1階の一部を住宅にリノベーションした作品である。

1階にはまだ事務所機能が残っているが、2階は全て住宅に用途変更され、エントランスからエレベーターが2階の住宅まで新設された。

2階の床段差を解消するためLDKの床は90cmほど上げられているが、事務所の高天井の活用と床までの開口により、閉塞感は少ない。「アコウの木」を眺められ、街中にありながら季節を感じることが可能となっている。

季節の移ろいを感じる家 株式会社東条設計

奨励賞:子供と明るく暮らす新しい住まい

1階和室をリビングと一体化して広々とした洋室空間にリフォームされている。

水廻りの改修のみならず、生活動線を変えることで暮らしやすくしている点が評価された。

真壁を大壁に改修して現代的なインテリアとしているが、真壁の現代的な提案にも次はトライできないだろうか。他方、比較的、低予算で機能の更新拡充を実現した作品でもある。

子供と明るく暮らす新しい住まい 尾堂産業(有)

特別賞:『家族の想いと暮らしを次世代に紡ぐ家』

離島の小高い丘にある平屋のリフォームである。

北側にあったDKを南面に移動し、3室の和室の配置を変えて全て洋室とした。

家事の動線を短くなり、女性が暮らしやすい平面計画である。外装の色調が変わっているが、周辺環境との調和によるものかは提出書類からは判断出来なかった。住環境の関係から色調の変更について語ることができれば、素晴らしい。

『家族の想いと暮らしを次世代に紡ぐ家』 (株)丸三建設工業設計室

特別賞:自立生活へ あったか福祉住宅

店舗付住宅の店舗部分を高齢者二人が暮らす居室にリフォームした作品。

床暖房により居室の環境性能を向上させながら、段差の解消等バリアフリ-化に配慮した計画である。

応募用紙からは敷地周辺の状況読み取れないが、シャッターを撤去し、元の形を残しつつ、まちなみの修景にも貢献できているのかもしれない。必要最小限の部分だけをバリアフリーリフォームして、使われていなかった空間を活用した点は評価できるが、寝室への採光についての提案があれば、より高い評価につながったではないだろうか。

自立生活へ あったか福祉住宅 日本ガス住設(株)

特別賞:住まいを楽しむ・・・シンプルモダンな郡山の家

40年前の2階建ての1階をリフォームし、孫達が集まれるように縁側を室内に取り込み各室を拡げ、多人数が集まれるスペースが確保されている。

また、リビング内に畳を敷いたエリアを設け、多目的な利用も可能となっている。

収納スペースを拡充し、浴室廻りの機能向上をしながら、比較的コストも抑えた改装で評価できる。インテリアはシンプルでモダンな印象の大壁に変更され、構造材の多くが壁に取り込まれている。改修の際には、大壁か真壁か迷うところだが、地震やシロアリに対しては真壁が有効とも言われるので、真壁によるシンプルでモダンなインテリアの提案もあり得るのかもしれない。

住まいを楽しむ・・・シンプルモダンな郡山の家 (有)坂口サン建築

部門賞(外装):これぞ塗り師マジック外装リフォーム

築20年のコンクリート住宅を購入したオーナーの要望で、コンクリート描写塗装で外装を一新した作品。

日本の気象条件では、打ち放しコンクリートは劣化し黒ずんでしまうことが多く、高圧洗浄してからトップコートを塗布する事例や竣工時にあらかじめトップコートを塗る事例も増えつつある。

トップコート等は打ち放しのテクスチャに比べて光を反射し打ち放しのブルータルな魅力が減じてしまうこともあるが、コンクリート中性化の進行を遅らせる効果がある。コンクリート打ち放しの重要文化財指定も進み、新たな保護材や仕上材も開発されつつあり、打ち放しの改修保全の方法も多様化し、事例が今後増えていくことが予想される。これらの状況を踏まえ、今年度は部門賞にこの外装リフォーム作品を選定した。

これぞ塗り師マジック外装リフォーム 有限会社西谷工業

審査講評
住まいのリフォームコンクール審査委員会
    委員長 鯵坂徹 [鹿児島大学大学院理工学研究科 教授]

過去の「住まいのリフォームコンクール」

© 鹿児島県住宅リフォーム推進協議会 All rights reserved.