安心して生活を楽しむことができる住まいづくり 鹿児島住宅リフォーム推進協議会

事例紹介

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第31回「住まいのリフォームコンクール」審査講評

住まいのリフォームの優れた事例を表彰してリフォームを推進することを目的とした、(公財)鹿児島県住宅・建築総合センターの主催する「住まいのリフォームコンクール」は今年で31回目となった。今年の応募作品は、木造や鉄筋コンクリート造の築80年から築18年までの15件で、築40年代から築20年代が12件と全体の8割を占め、木造戸建て住宅が10件、RC戸建て住宅3件、RC共同住宅が2件だった。

近年、各地で豪雨災害等の異常気象が頻発し、地球温暖化による影響が指摘されている。そのため、建築のライフサイクルCO2[LCCO2 建築物の建設・運用・解体までの期間に発生する二酸化炭素排出量を1年あたりに換算した数値]の削減が求められている。建物の使用期間や環境性能に左右されるが、建設・解体時のCO2排出量も大きいため、改修により環境性能を上げながらできるだけ長期間建物を使い続けることがCO2排出量の削減に寄与すると考えられている。木材は光合成によりCO2でつくられているため、木造建築はまちや都市にCO2を蓄える効果があり、地球温暖化防止に貢献すると言われている。一方、鉄筋コンクリート建築の寿命は、これまでコンクリートの中性化が鉄筋に達するまでの期間とされ、おおよそ50年程度と考えられてきたが、2022年度版JASS5[日本建築学会 工事標準仕様書]で次のように改定される。「鉄筋コンクリートの耐久性を評価する際、中性化が鉄筋の位置まで進行するか否かで建物の寿命を判断していたが、鉄筋の位置まで中性化が進行しても、乾燥していれば鉄筋は錆びない」、つまり中性化は寿命に関係ないと大きく変更される。鉄筋が錆びない非腐食環境の場合、室内は中性化をまったく考えなくてよく、外部についても水が躯体に入らないようにすれば同様の耐久性が得られる。これまで50年前後で老朽化により建替えといった常識が間違っていたことになるのである。鉄筋コンクリートの物理的な寿命は百年以上であり、税法上の期間のみが50年ということになる。ライフサイクルCO2の削減に向けたこれらの考えは、今後、リフォームして建築を使い続けていくことの大きな後押しとなっていくであろう。

さて、今年度の審査委員会は9月14日に開催され、最初に7名(内1名はリモート参加)の審査委員が15件の応募作品を各自読み込んだ後、一人7票を各作品に投票したところ、6票が2作品、5票が3作品、4票が3作品、3票が2作品、2票が1作品、1票が2作品となった。各作品の得票を踏まえながら、審査員が、一つ一つ作品の評価できる点や問題点について慎重に意見を交換した。その結果、2票の1作品は、他に例のない浴室と窓のみのリフォーム作品のため再投票の範囲に残し、0票と1票の4作品をはずした11作品に審査員一人5票を再投票した。しかし、また票が分かれたため、再度意見交換した上で、4票以上の4作品に一人2票ずつ再々投票し、5票の築80年の木造戸建て作品に県知事賞、4票の築42年の戸建て作品に理事長賞、3票と2票の作品を企画賞に決定した。そして先の再投票で3票だった3作品から、1作品を耐震補強等が評価できる特別賞、他の2作品を奨励賞として相応しいと意見が一致した。また、浴室と窓のリフォームの作品がユニットバスを採用せずに改修していることもあり、部門賞とすることにした。

今回は、リフォーム内容が多岐にわたり、審査員の評価が分かれ、各作品の評価は僅差だった。特に最後まで築80年の木造戸建て作品は、浴室が平面図で確認できず住宅以外の用途で使われている可能性があり、県知事賞の対象として適格か、用途や法的問題に関して意見が交わされた。このコンクールでは、現地審査を実施していないため、提出された書類での判断となるが、2019年6月に施行された改正建築基準法で、地上3階建て以下で200m2未満の建物を特殊建築物に用途変更する際に、柱、梁といった主要構造部の耐火構造への改修を不要とし、確認申請が不要な規模も変更後の用途の床面積が200m2以下までに拡大されていることから、適法であるとの結論になった。 また、このコンクールはもともと住宅から住宅への改修が応募の条件としていたが、現在は住宅から他用途へのリフォームも表彰対象としているため県知事賞として問題ないとの結論に達し、投票結果を最終的な審査結果とした。審査終了後、各応募者・設計者・施工者が事務局より審査員に開示され、また、今後のコンクールの募集内容等について意見が交わされた。

審査講評

住まいのリフォームコンクール審査委員会
委員長 鯵坂 徹 [鹿児島大学大学院理工学研究科 教授]

審査委員
委員長鯵坂 徹 鹿児島大学大学院理工学研究科工学専攻建築学プログラム教授
委 員梅野 一郎 (一社)鹿児島県建築士事務所協会副会長
委 員打越 綾 (公社)鹿児島県建築士会女性部会幹事
委 員桑原 耕 (一社)鹿児島県建築構造設計事務所協会会長
委 員岩元 ミユキ 鹿児島県インテリアコーディネーター協会会長
委 員上村 康孝 鹿児島県土木部建築課住宅政策室長
委 員松尾 浩一 (公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長
第31回「住まいのリフォームコンクール」入選作品集

鹿児島県知事賞:『未来に繋ぐ古民家』

築80年の木造平屋の古民家の魅力を残しながら、長寿命化、環境性能、機能向上に取り組んだ作品。瓦を葺き替え、外壁を補修し、まず古民家の長寿命に欠かせない雨水の侵入を防いでいる。床全面と外壁に断熱材を設置し、環境性能を向上。和室の一部をフローリングに改修、襖をはずして大広間とし、腐朽した床板を撤去して三和土の土間にする等、使える機能に更新した。また、既存の床の間、書院等々の造作を残しながら、聚楽壁を漆喰壁に塗り替え、ある意味、時間の巻き戻しまで行い古民家のよきところが隅々に散りばめられている。子どもたちがのびのび暮らせる(遊べる)空間にしたと書かれ、浴室も撤去されていることから、住宅というより多目的空間に改修され、古民家を何らかの用途として使い続けている点も評価できた。古民家は新建材でなく、地域のほんものの材料が使われており、その魅力を熟知した設計手腕が素晴らしく、鹿児島県知事賞に選定した。

『未来に繋ぐ古民家』 株式会社建築工房work・space

(公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長賞:『開聞岳を臨む家』

指宿市の築約42年の木造平屋の住宅のリフォームで、内部空間が一新された作品。南側の縁側と思われる部分を取り込み、広々としたリビングダイニングの空間となっている。北側の6畳も和室も一体利用が可能で、収納は別棟の倉庫が利用され見通しの良い明るい印象で好感が持てる改修である。 断熱材の施工や、ガラスも真空層のあるペアガラスに交換、住宅設備も更新され、環境性能の向上が確認できる。旧来が戦後の住宅なので大壁構造だったと推測されるが、柱等の構造材がすべて覆い隠されており、シロアリ等の対策や構造補強に関しての記載がなかったが、表題や写真等により審査員が理解しやすく好感がもてる提案となり、理事長賞となった。

『開聞岳を臨む家』 有限会社幸福住建

企画賞:『夫婦と共に或る家』

築35年の平屋を夫婦二人が老後を楽しむためにリフォームした作品。昭和末期の住宅なので中廊下・縁側があり、4つの和室とLDKの構成だった。 その平面形を大きなLDKと洋室主体の間取りに変更し内部を全面的に改修するだけでなく、認定長期優良住宅化リフォーム推進事業に申請し、インスペクション、耐震診断を実施、基礎の補強や耐力壁の増設を行った。 外断熱、垂木間断熱、開口部交換により断熱性能を高め、熱交換型換気設備が設置されている。新築同様の質の高いインテリアに改修されており、技術面の評価も高かった。 ガレージと一体化しているが法的な問題もないことが確認され企画賞となった。

『夫婦と共に或る家』 株式会社正匠

企画賞:『リノベで住まう!新しいわが家』

築30年の鉄筋コンクリート造2階建てを30代の子育て4人家族が購入してリフォームした作品。新耐震の壁式構造のため、既存構造壁でない間仕切壁を撤去して27畳のLDKに改修、1階はご主人の仕事部屋を除き、ほぼワンルームとして利用できる空間となっている。新築より遥かに安い改修費で、快適な新築同様の住宅となっている点が評価され企画賞となった。ただ、全面的な環境性能の向上でないこと、鉄筋コンクリートの屋根防水の改修や補修が記載されていないことが若干残念であった。

『リノベで住まう!新しいわが家』 有限会社イヤダニ工務店

奨励賞:『老後を見据えたフレキシブルな住まいへ』

築44年の鉄筋コンクリート12階建ての3LDKをリフォームした作品。5年間賃貸で利用し、5年後の移住を目指しての改修。下階への騒音防止を目指した下地材やフローリングが施工され、施主が伐採した銀杏がキッチンのカウンターに使われている。間仕切りの引戸や袖壁等が改修され開放的な空間となっており評価された。

『老後を見据えたフレキシブルな住まいへ』 株式会社アリマコーポレーション

奨励賞:『ちょっと気分の上がる毎日へ #a feel good room』

築18年の鉄筋コンクリート造賃貸住宅のリフォームで、長期間空室だった住戸の改修により入居を促進することができた作品。3部屋+DKだった構成を2部屋+LDKとしてインテリアを全面改修し、水回りも更新されている。郊外で今でも新築アパート等の建設が見られるが、少し古くなった共同住宅をリフォームして空室を減少させ、新築を抑制できれば地球温暖化防止に貢献できる可能性がある。そのためにも、建具や壁の断熱についても今後は配慮されることが望ましいと思われる。

『ちょっと気分の上がる毎日へ #a feel good room』 ユーミーコーポレーション株式会社

特別賞(耐震改修):『三世代が 安心安全に集う 松元の家』

築40年の父親の建てた平屋の木造住宅を3世代同居の住宅にリフォームした作品。作業場を解体しその部分を水回りに改築し、全体の耐震性能の向上に役立てている。鹿児島市の耐震診断・改修工事補助金を使い耐震補強を実施、その補強内容の写真が添付されており審査員から好評だった。また、環境共創イニシアチブの次世代建材補助金を活用し、天井・壁・建具の改修が実施され、それらも写真から確認することができた。耐震と環境性能の双方の向上が評価され、最も特別賞に相応しい作品として特別賞に選定された。

『三世代が 安心安全に集う 松元の家』 株式会社建築工房匠

部門賞:『檜の香りで満たされた癒しの家屋』

築25年の木造住宅の浴室と窓の部分リフォームの作品。浴室をタイル貼りから檜の羽目板に改修、ユニットバスを使わずに信楽焼の浴槽を設置、全室の窓の内側に鹿児島産檜の木製建具を設置し、建物の環境性能の向上を目指している。部分リフォームではあるが、施主の気になる点を上手く改修している点が評価できる。

『檜の香りで満たされた癒しの家屋』 有限会社西谷工業

審査講評
住まいのリフォームコンクール審査委員会
    委員長 鯵坂徹(鹿児島大学大学院理工学研究科 教授)

過去の「住まいのリフォームコンクール」

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